ある限界集落の記録ー昭和二十年代の奥山に生きて
<消えゆくニッポンの農山村>
著者の生まれ故郷、岡山県新見市上熊谷の集落は、中国山地の奥深くに位置しており、電気がついたのは昭和22年、道路が通じたのは昭和35年だった。昭和20年代には12軒百人を超える住民で賑わっていたが、現在は3軒に暮らす十人にも満たない人々を残すのみとなってしまった。
本書では昭和20年代の集落のようすと生活がつぶさに描かれ、高度経済成長期以前の奥山の暮らしと、そこに生活する人々の喜怒哀楽が甦る。
筆者の母や兄弟の人生も語られ、戦後日本の山村出身者一家のひとつの歴史を見ることができる。それは、地縁や血縁の共同体のかつての姿と、それらが消滅していく過程でもあった。
<著者紹介>
小谷 裕幸(こだに ひろゆき)
1940年、岡山県生まれ。大阪大学文学部卒業、同大学院文学研究科修士課程修了(独文学)、鹿児島大学名誉教授、独語・独文学、児童文化論専攻。ゲーテの文学、マックス・フリッシュの文学、スイス社会の研究を経て、現在は説話の研究に従事している。
〈翻訳書〉『ふしぎなどうぶつえん』(サラ・バル作、1986年、冨山房)、『びっくりどうぶつえん』(サラ・バル作、1987年、冨山房)、『東洋紀行1~3』(東洋文庫:G.クライトナー著、大林太良監修、小谷裕幸・森田明共訳、1992~1993年、平凡社)、『ドナウ民話集』(パウル・ツァウネルト編、2016年、冨山房インターナショナル)。
2024.5.6
「山陽新聞」コラム<滴一滴>に本書が紹介されました!こちらからご覧頂けます
2023.10.15
「讀賣新聞」<本よみうり堂>に本書が紹介されました!こちらからご覧頂けます
2023.9.23
「毎日新聞」<今週の本棚>に本書が紹介されました!こちらからご覧頂けます
2023.9.17
「産経新聞」に本書が書評に載りました!こちらからご覧頂けます
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- 70歳代・男性
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- 季節ごとの農作業、水の確保、自給自足の食糧事情、子供の遊び、家計の事情等々昭和20年代の山間の小さな集落の状況が詳細に記されています。それらは現在のある意味で恵まれた私達の生活実態とはあまりにかけ離れています。そういう厳しい情況にありながらも、自然の産物を知恵をしぼりながら創意工夫をこらして利用し、たくましく生き抜いていく、著者の住む指野(さしの)の人々のパワーには圧倒されます。著者によると当時は現金収入が十分ではなく、その点では貧しかったが、今、振り返ってみて、農作物等をはじめ、家族で助け合い、常に旬の新鮮な食材を食べることなど欠損感より充実感の方が多かったように思うと肯定的に回想しておられ、私の心に深く染み入りました。
- 投稿者
- 70歳代・男性
- 購入した動機
- 感想
- 小谷稔先生に高校時代、国語を学び60歳にして短歌も教えて貰った生徒です。小谷稔先生のふる里を詠った短歌は数多くあり、その背景や情況がよくわかりました。冷静に客観的にしかも温かい眼で限界集落としてふる里を書かれて大変な御苦労であると思います。それが単に岡山のふる里のみならず日本の至るところで今生じている限界集落だと思います。何の力にもなりえませんが、心して読ませて頂きました。又、私の母の実家の農村風景も思い出す事が出来ました。感謝します。
- 投稿者
- 70歳代・女性
- 購入した動機
- 感想
- 私はこの限界集落の出身です。とても懐かしく一気に読みました。私の知らない事や子供の頃のお話がりとても嬉しかったです。私の宝物です。有り難うございました。
- 投稿者
- 70歳代・女性
- 購入した動機
- 感想
- 友人が新見に近い限界集落の出でプレゼント目的でこの本を購入しました。私は74歳友人は80歳で共に昭和20年代を山村で過ごした者です。本の内容が細かく記されており、両親の苦労を知り、感謝の念が強くなりました。
- 投稿者
- 男性
- 購入した動機
- 感想
- 私の生まれは岡山県勝田郡勝田町生まれです。ある限界集落と同じような生活地域で生活しました。この本を読んで同感するところがあります。実家に行き現状を見たり聞いたりしたいと思っています。
- 投稿者
- 80歳代・女性
- 購入した動機
- 感想
- 毎日新聞に(紹介欄に)新見と言う文学を見つけ懐かしく購入しました。 私は1938年昭和13年で当時85歳著者の方と2歳上ですが文章の隅々に書かれている状況にうなづく事が多く久しぶりにふる里と幼年時代を思い出しました。
- 投稿者
- 70歳代・男性
- 購入した動機
- 産経新聞の小さな書評を見て購入した。
- 感想
- 先ず10頁の略図から著者が新見市の出身であり本文から我が母校新見高校の8年先輩であることも解かった。俄然、親近感が高まり読み進むと内容は自分の少年時代と全く同じ!内容も更に単語の1つ1つが私の実体験と重なり情況が思い出され思わず笑ってしまうことも。著者は記憶だけで書かれたと思うが、内容の精緻さには感服する。例えば、将棋の「お金将棋」をよくしたが今ではそのルールは漠然としかない。 本書の特徴は事実の記述に徹しており、決して自論を押し付けていない。しかし、自分には限界は叢林と化す「集落」だけでなく「日本」かもしれないと読めた虚飾の鳥合と化す「都市」も限界に違いない。