第二次大戦でフィリピンに従軍した日本の一等兵の記録です。爆撃で傷つき、治療もされないまま密林に置き去りにされ、死の直前に奇跡的に救われて生還した体験が切々とつづられています。「戦争」とはどういうものか、忘れられていく戦争の実態を子どもたちに語り継ぐ書です。子どもたちにも分かりやすい表現で書かれています。 読者対象:小学校高学年から

私は今も、よくまあ無事に還れたものだと自分ながら感心することがたびたびある。九死に一生という言葉があるが、私は比島(フィリピン諸島)でこの九死に一生を体験した。「無事に帰ったら、この苦しみだって良い思い出さ」と語り合った戦友たちは恨みを遺して、彼の地の土と化してしまった。(「はしがき」より)

【推薦】黒沼ユリ子(バイオリニスト)
かけ替えのない文字と行間に詰められた貴重な思いを、後世の日本人に残してくださったことには、感謝以外の言葉を私には何も見つけられません。今日の若い人々の必読書といえます。


<著者紹介>

宮澤 縱一(みやざわ じゅういち)

1908(明治41)年、東京生まれ。音楽評論家。京都帝国大学法学部卒。武蔵野音楽大学教授。1968年に放送文化賞、1972年に紫綬褒章を受章。2000(平成12)年、死去。 著書:『私がみたオペラ名歌手名場面』『ビゼーとカルメン』『あなたをオペラ通にする本‼』『プッチーニのすべて』『明治は生きている―楽壇の先駆者は語る』『蝶々夫人』ほか多数。