《海と生きる》という意味を考える
東日本大震災から6年、漁師の「生」は…
三陸の漁師たちは海で生活してきたのではなく、海と生活してきた。今こそ、津波に何度も来襲された三陸沿岸に生き続けた漁師の、運命観、死生観、そして自然観に学ぶときではないか。今を生きる者も死者も、それぞれが海を見つめている。海がどんなに危険であろうとも、それを抱え込んで生きてきた、漁業という生業に伴う生活文化や生活感情がある。……海という自然を信じ、自らの内なる自然の声にも耳を傾け、それを全体として捉える生き方が、ときに海難や災害にめぐりあったとしても、生きる意味を見出しているのである。漁師などの生活者の災害観を前提にしないかぎり、防災や減災の対策は、ことごとく失敗するであろうと思われる。「おわりに」より

<川島先生の著書>
『津波のまちに生きて』はこちらから
『安さんのカツオ漁』はこちらから

<著者紹介>
川島秀一(かわしま しゅういち)
1952年生まれ。宮城県気仙沼市出身。法政大学社会学部卒業。博士(文学)。東北大学附属図書館、気仙沼市史編纂室、リアス・アーク美術館、神奈川大学特任教授などを経て、現在、東北大学災害科学国際研究所教授。 著書に、『ザシキワラシの見えるとき』『憑霊の民俗』(以上三弥井書店)、『漁撈伝承』『カツオ漁』『追込漁』(以上法政大学出版局)、『津波のまちに生きて』『安さんのカツオ漁』(以上冨山房インターナショナル)、編著に山口弥一郎『津波と村』(三弥井書店)などがある。

 

■2017年4月2日 「朝日新聞」書評が掲載されています (評者:佐伯一麦氏)