森の時間
前 登志夫 著
吉野の森の奥深く、杉、檜、山桜、アケビ、つつじ、椿が乱舞し、 むささび、たぬき、猪、鹿、熊が息をつめるなかで、 人は、生き、狂い、享楽する。自然と人間の織りなす饒舌でもの静かなドラマを微細な筆致で描く、 吉野在住の戦後を代表する歌人による現代の名編、ここに甦る。未収録作品「椿村」を加えた決定版。
谷川健一氏推薦 「『森の時間』は魅力あふれる前登志夫さんの名篇である。私はこの本は、前さんの歌の業績と匹敵するとさえ思っている。少なくとも彼の歌の背景を知るのに、最も欠かせない本であることはたしかだ。私は一読して、吉野の山林と森に展開するふしぎな時間の流れに茫然とし、当惑した。これは都会生活で否応なく強いられる直線的な時間との対応を打ち砕き、無化するものがあった。私は『森の時間』の抗しがたい魔力の虜となっている自分に気が付いた。」(谷川健一「『森の時間』を読む」より) |
<著者紹介>
前 登志夫(まえ としお)
奈良県吉野郡下市町に生まれる。前川佐美雄に師事し短歌を志す。1978年『縄文紀』(白玉書房)により第12回迢空賞を受賞。その後『樹下集』(小沢書店)で第3回詩歌文学館賞、『鳥獣蟲画』(同)で第4回斎藤茂吉短歌文学賞、『流轉』(砂子屋書房)で第26回現代短歌大賞、『鳥總立』(同)で第46回毎日芸術賞などを受賞。歌集のほかに、エッセイも多数執筆。日本芸術院会員。2013年に『前登志夫全歌集』(短歌研究社)が刊行されている。
森の時間
定価:1,980円(本体1800円+税)
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